熊鼠之舎

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0004 旧宮家の復帰について

0.はじめに

昨日、喫緊の課題である皇位継承問題の有識者会議骨子案が取りまとめられたとの報道があった。それによると、

 イ、皇統に属する女性皇族が婚姻後も皇籍に残り公務を担う
 ロ、旧宮家の男系男子孫が現皇族の養子に入る
 ハ、旧宮家の男系男子孫を法律を以て直接皇族とする

の三案であるという。私は、イ・ロは邪道であり、ハを推し進めるべきだと考えている。その前に、皇位継承問題について少しまとめてから、特にロとハについてそう思う私見を述べたい。

さて、一般的に、皇位継承問題の解決策として

 ①自然に任せる(悠仁親王殿下が結婚し子を成す迄何もしない)
 ②旧宮家の復帰(GHQにより皇籍離脱した11宮家の皇籍復帰)
 ③女性天皇復活(男系女子への皇位継承権の一時/恒久的賦与)
 ④女性宮家創設(男系女性皇族の婚姻後の宮家創設・皇籍残留)
 ⑤女系天皇容認(父系に天皇を持たない人物への皇位継承容認)

の五点が挙げられて議論されているものと思う。これらの案の問題点として謂われているのは、反論は諸々あれど、以下の通りだろう。

 ①→そのタイミングになれば皇族数は更に減少してしまう。
   皇族一人に係る公務の負担も増大し、公務をより縮小せざるを得なくなる。
 ②→離脱から70年以上も民間人として生活した彼らに対し、
   国民は納得しないだろう。
 ③→皇室典範条文に違反するため改正しなければならない。
   男系男子が存命の中推進することは不敬ではないか。
 ④→民間人男子が皇室に入ることは前代未聞、許されない。
   その子供の地位はどうするのか。
 ⑤→天皇の地位は、父系を辿れば神武天皇に行きつく存在。
   皇室の乗っ取りを許し、皇室が破壊されてしまう。

私は、②・③の案を推進すべきだと考えているが、そう考える理由のうち、今回はタイトル及び前述の通り、旧皇族の直接復帰を主軸に書いていきたい。

1.現状の整理

皇位継承問題と並行して、皇族数の減少が問題となっている。現在の皇室の方々の数は

 男性;五方

天皇陛下上皇陛下、東宮殿下、悠仁親王殿下、常陸宮殿下

 女性;十二方

皇后陛下太后陛下、敬宮殿下、東宮妃殿下、佳子内親王殿下、常陸宮妃殿下、三笠宮妃殿下、寬仁親王妃殿下、彬子女王殿下、瑶子女王殿下、高円宮妃殿下、承子女王殿下

の計十七方しかおられない。

象徴天皇制下、重視された公務は数が減れば皇族御一方にかかる負担も過大となり、負担の軽減のため縮小しなければいけなくなっている

この皇族数減少による公務負担の増加の解決策が旧宮家の復活だと考えている。私の中では、この旧宮家復帰を決して皇位の安定継承の第一義的解決策として捉えない

2.復帰させるべき宮家

では、具体的にどの宮家、どの方を復帰させるべきだと考えているのか。

まず、皇別家の皇位継承順位をまとめたページが多く見受けられるが、その中に於いて、以下に当てはまる家は復帰させるべきではないと考えている。

「十一宮家の臣籍降下」以前に公家や華族となるなどして皇籍を離れた家
「十一宮家の臣籍降下」以後の家督継承で皇別以外の子を嗣子とした家
「十一宮家の臣籍降下」以後に他家の養子になった者、宮号を苗字としていない家

すなわち、

北白川家、東伏見家、梨本家、伏見家

閑院宮有栖川宮は既に断絶

清棲家*1・渋谷家・伏見伯爵家・華頂家(伏見宮系)、筑波家・鹿島家・葛城家(山階宮系)、粟田家・多羅間家・壬生家・寺尾家(東久邇宮系)、龍田家・宇治家(梨本宮系)、小松家*2・二荒家*3・上野家(北白川宮系)

鷹司家・華園家・梶野家・徳大寺家・高千穂家・千秋家・西園寺家・末弘家・醍醐家・住友家・菊亭家・南部家・山本家・近衞家・水谷川家・室町家・四辻家・東儀家・常磐井家・北河原家

已上の方々の皇籍復帰は無いものと思っても問題ないと思われる。

ゆえに、残る賀陽宮久邇宮朝香宮東久邇宮竹田宮*4の五家の皇籍復帰が望ましい。この五家は言わば「十一宮家の臣籍降下のとき離脱した家の中で、伏見宮父系男子孫が存命で且つ賜りし宮号を苗字に冠している家」と言えようか。

より細かく見ていこう。

賀陽宮家;賀陽正憲/同妻/同長男/同次男/賀陽文憲
久邇宮家;久邇邦昭/久邇朝尊/久邇邦晴*5
朝香宮家;朝香誠彦/同妻貴子/明彦
東久邇宮家;東久邇征彦/同母吉子/同妻/同長男
       東久邇眞彦/同長男照彦/同長男/同次男睦彦/同長男/東久邇盛彦
竹田宮家;竹田恒正/竹田恒貴/竹田恒治/同妻幾美子/竹田恒昭/竹田恒智
      竹田恒和/同妻昌子/竹田恒泰/同妻/同娘/竹田恒俊

以上の方々と、記載できていない妻や未婚の父系女子を皇族として還迎することを提案したい。(緑字は離脱前に諸王であった人物。)

その方法は、養子案ではなく、宮家ごと復帰させることである。即ち、

秋篠宮常陸宮三笠宮高円宮

       +

朝香宮賀陽宮久邇宮竹田宮東久邇宮

ということである。養子案ではない理由は、養子禁止を謳う皇室典範の論拠でもある「皇位継承順を恣意的に変更する可能性がある」という問題点を顧みたとき、例えば天皇陛下の養子となったならば、東宮殿下よりも継承順位が先行してしまいかねず、「養子による復帰は誰が、何人が、どなたに養子入りするのか」「皇位継承順はどうするのか」という点を漏れなく議論する必要があり、喫緊の解決策としてはそぐわないためである。そう考えたとき、宮家ごと復帰させることは、可及的速やかに実行でき、かつ現状の皇位継承順位変更への懸念は無くて済む。

また、復帰に併行して、復帰した方々の父系尊属を「没前の皇籍に在った際の身位に復し、それのない者には王号を追贈する(没後の皇籍復帰)」という措置にするべきだと考える。 即ち、上記の方々で謂えば、

賀陽宮尊属;賀陽恒憲→賀陽宮恒憲王/妻賀陽敏子→恒憲王妃敏子
       賀陽章憲→章憲王/妻良子→章憲王妃良子
久邇宮尊属;久邇朝融→久邇宮朝融王/母久邇俔子→邦彦王妃俔子
朝香宮尊属;朝香孚彦→朝香宮孚彦王/妻千賀子→孚彦王妃千賀子
       朝香鳩彦→朝香宮鳩彦王
・東久邇尊属;東久邇信彦→東久邇宮信彦王
       東久邇盛厚東久邇宮盛厚王/妻成子→盛厚王妃成子内親王
       東久邇稔彦東久邇宮稔彦王/妻聰子→稔彦王妃聰子内親王
竹田宮尊属;竹田恒徳→竹田宮恒徳王/妻光子→恒徳王妃光子

となる。これは、皇籍にある宮家としての断絶を避けるための措置である。

3.復帰させるべき理由

別の機会に述べるとするためここでは女性宮家女系天皇の問題は触れないでおくが、ではどうして旧宮家の復帰なのか。

それは、臣籍降下後の皇族が皇籍に復帰するという先例が存在するからである*6。日本の皇室は先例主義である。先例にないことを導入するためには、それを導入するだけの国内的重要事由が必須であり、それを導入しようとする者こそ、納得のいく説明をする義務がある。果たして女性宮家女系天皇推進派はそれを説明できるのか。私はいまだそれを聞いたことがない。

そもそも、これから現れるかもしれない皇統に属する男系女子の夫及び子を想定して行う議論よりも、今現在実際に存在している旧宮家の方々を復帰させるという、先例にも適う議論を行う方がより現実的ではないだろうか

また、「国民の納得」についてだが、納得しない理由の中には、どうやら「旧宮家復帰=天皇即位」と飛躍した、短絡的な理解をしている族が少なくない。しかし、「旧宮家復帰≠天皇即位」である。これから先、何事もなければ東宮殿下、悠仁親王殿下は皇位を継承され、所生あればそちらが優先される。この点はしっかりと、国民は理解しなければならないはずだ。そのうえで、上皇陛下、天皇陛下と大切にされたご公務を引き継ぐ皇族をすぐに増やすためには、先例を優先させるのが至極妥当である。

4.追伸

前回の投稿から一年以上も空いてしまったが、次は女性天皇について書いてみようと思う。どれくらいかかるか……。

(3500文字)

5.脚注

*1:祖は清棲家教。元渋谷家。実子は渋谷家を継承し、家督は真田家の幸保に継承。

*2:祖は小松輝久。

*3:祖は二荒芝之。伊達宗徳の子・芳徳を養子に取った。

*4:班位の順。

*5:久邇朝建氏は長女桂子の子朝俊氏が当主筋となっている。
朝宏氏の所生は女子二方で婿養子を取っており、両者とも皇統から外れている。
朝建氏には明俊氏という子がいるという話があり、確認できなかったため今回除外したが、父系子孫で婿養子を採っていなければ十分復帰に資する。

*6:宇多天皇醍醐天皇鎌倉幕府7代将軍惟康親王等。特に醍醐天皇は臣下に生まれのち皇籍に復帰した。